〜中国市場は引き続き大幅減。一方で19市場が5月過去最高を記録〜
今回は 2026年5月の訪日インバウンド速報をもとに、最新動向を整理します。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2026年5月の訪日外国人客数は3,559,900人(前年同月比 ▲3.6%)となりました。
前年同月を下回る結果となったものの、5月は桜シーズンと夏休みシーズンの間にあたり、もともと訪日需要が落ち着きやすい時期です。
その中でも、韓国・台湾・米国・マレーシアなど19市場で5月として過去最高を記録。さらに、中東地域とインドでは単月過去最高となり、インバウンド市場全体としては引き続き高い水準を維持しています。
【概況】中国市場の大幅減が続く一方、多くの市場が過去最高を更新
5月のインバウンドを語るうえで、最も大きなポイントは引き続き中国市場の減少です。
中国からの訪日客数は、313,000人(前年同月比 ▲60.4%)。
中国政府による日本への渡航注意喚起に加え、航空便の減便、さらに前年は5月末にあった端午節が今年は6月中旬にずれた影響もあり、前年同月を大きく下回りました。
一方で、他市場では好調な動きも目立ちます。
- 韓国:951,300人(+15.2%)
- 台湾:616,800人(+14.6%)
- 米国:333,700人(+7.0%)
- マレーシア:72,200人(+39.6%)
- 中東地域:39,000人(+67.8%)
4月までは中東情勢による航空便の運休・減便が訪日数の下押し要因として見られましたが、5月は一部路線の航空便再開やイスラム教の祝日が5月下旬にあった影響もあり、中東地域は大きく回復し単月過去最高を記録しました。
中国市場の落ち込みは継続しているものの、韓国・台湾・東南アジア・欧米・中東など複数市場が訪日需要を支えています。
インバウンド市場は、特定市場依存ではなく、多様な市場で支える構造がより鮮明になっています。

【各エリアの詳細】
■ 東アジア:韓国・台湾は好調、中国は引き続き大幅減
東アジア市場では、韓国と台湾が引き続き好調でした。
- 韓国:951,300人(+15.2%)
- 中国:313,000人(▲60.4%)
- 台湾:616,800人(+14.6%)
- 香港:207,900人(+7.7%)
韓国は、継続する訪日旅行人気に加え、前年同月と比較して航空座席数が増加したことや祝日の影響もあり、5月として過去最高を記録しました。
台湾も、日本のゴールデンウィーク期間を避ける動きはあったものの、航空座席数の増加が追い風となり、こちらも5月として過去最高となっています。
香港も航空座席数の減少はあったものの、祝日需要などにより前年を上回りました。
一方で、中国は大幅減が続いています。渡航注意喚起や減便の影響に加えて、端午節の時期ずれも重なり、5月も厳しい結果となりました。
東アジアは、韓国・台湾が安定的に訪日需要を支える一方、中国市場は政治・外交要因の影響を強く受けています。短期施策では韓国・台湾を軸にしつつ、中国は回復局面を見据えた中長期的な準備が重要です。
■ 東南アジア:マレーシア・シンガポールが好調、インドも単月過去最高
東南アジア・南アジア市場では、国ごとの差はあるものの、全体として堅調な動きが見られました。
- タイ:98,800人(▲8.6%)
- シンガポール:76,600人(+21.1%)
- マレーシア:72,200人(+39.6%)
- インドネシア:56,800人(+8.6%)
- フィリピン:85,000人(+2.8%)
- ベトナム:58,000人(▲2.1%)
- インド:56,500人(+31.3%)
シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンはいずれも5月として過去最高を記録。
特にマレーシアはスクールホリデーや祝日の影響もあり、大きく伸びました。
インドは、デリー・ムンバイ発着路線の増便や、2026年1月のデリー〜成田線の新規就航、スクールホリデー需要も追い風となり、単月として過去最高を記録しています。
一方で、タイは祝日の並びが前年より悪かったことや、訪中旅行人気の影響もあり減少。ベトナムも一部航空便の減便などにより前年を下回りました。
東南アジア・南アジアは、祝日やスクールホリデー、航空路線の拡充に強く反応する市場です。特にマレーシア・インドは、今後の成長市場として注目度が高まっています。
■ 欧米・豪州:米国を中心に堅調、5月の“混雑回避需要”も
欧米豪市場も、全体としては安定した動きとなりました。
- 豪州:82,300人(+4.3%)
- 米国:333,700人(+7.0%)
- カナダ:69,400人(+4.6%)
- メキシコ:19,700人(+30.6%)
豪州、米国、カナダ、メキシコはいずれも5月として過去最高を記録しました。
特に米国は、継続する訪日人気に加え、祝日による旅行需要や、混雑する桜シーズン・夏休みシーズンを避けて5月に訪日する動きが一定数あったことがプラスに働いています。
メキシコも、経由便の多様化や若年層を中心とした訪日需要の高まりにより、大きく伸びました。
欧米豪は、混雑を避けた“ずらし旅行”や、地方周遊・体験型コンテンツとの相性が良い市場です。人数だけでなく消費単価の面でも、引き続き重要なターゲットと言えます。
■ 欧州・中東:欧州は堅調、中東は一転して大幅増
欧州主要国も、5月として過去最高を記録する市場が多く見られました。
- 英国:55,200人(+6.0%)
- フランス:48,500人(+5.3%)
- ドイツ:50,200人(+18.8%)
- イタリア:28,100人(+12.6%)
- スペイン:21,900人(+5.3%)
- ロシア:24,600人(+28.4%)
- 北欧地域:17,400人(+11.9%)
- 中東地域:39,000人(+67.8%)
欧州では、英国・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア・北欧地域がいずれも5月として過去最高を記録しました。
特にドイツは、祝日が複数回あったことによる旅行需要の増加もあり、前年比+18.8%と堅調に伸びています。
そして、今回注目したいのが中東地域です。
4月は中東情勢による航空便の運休・減便が影響し減少していましたが、5月は一部路線における航空便の再開、イスラム教の祝日が5月下旬となった影響もあり、39,000人(+67.8%)と大きく増加。単月として過去最高を記録しました。
中東市場は、情勢や航空便の影響を受けやすい一方で、条件が整えば大きく伸びるポテンシャルを持つ市場です。今後も航空ネットワークや国際情勢を注視しながら、富裕層・ファミリー層向けの高付加価値施策を検討する余地があります。
【今月のポイント】5月は“調整局面”でも、多市場化の強さが見えた月
2026年5月は、全体では前年同月比▲3.6%とマイナスとなりましたが、これは主に中国市場の大幅減少が影響したものです。
一方で、韓国・台湾・東南アジア・欧米・中東など多くの市場では過去最高を更新しており、訪日インバウンド全体の底堅さが改めて確認できる結果となりました。
- 中国市場は引き続き不透明感が強く、短期的には依存リスクが大きい
- 韓国・台湾は安定した訪日需要を維持しており、東アジアの主力市場として重要
- 東南アジア・インドは、祝日・スクールホリデー・航空路線拡充で伸びやすい
- 欧米豪は“混雑回避”や地方体験との相性が高い
- 中東は情勢リスクがある一方、航空便再開時には大きく伸びるポテンシャルがある
インバウンド市場は、もはや一部の国だけで支えるものではなく、複数市場の組み合わせで高水準を維持するフェーズに入っています。
今後の施策では、国ごとのリスクや季節要因を見ながら、複数市場を組み合わせた戦略設計がますます重要になりそうです。
インバウンド市場は、国・地域ごとに状況やトレンドが大きく変化しています。カルチべートでは、最新データに基づく市場分析から、ターゲット市場の選定、プロモーションの企画・実施まで一貫してサポートしています。訪日インバウンド施策をご検討中の企業・自治体の皆さまは、ぜひお気軽にカルチべートまでご相談ください。
データ出典
日本政府観光局(JNTO)
「訪日外客数(2026年5月推計値)」
