〜中国市場の大幅減に加え、中東情勢や台風の影響も。韓国・台湾など7市場では9月過去最高〜
今回は、2026年9月の訪日インバウンド速報をもとに、最新の市場動向を整理します。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2026年9月の訪日外客数は3,103,700人(前年同月比▲5.0%)となりました。
全体では前年同月を下回ったものの、韓国、台湾、シンガポール、インド、メキシコ、ロシア、中東地域の7市場で9月として過去最高を記録しています。
一方で、9月は中国市場の大幅減少に加え、中東情勢による航空券価格の上昇、航空便の減便、台風による欠航などが複数市場に影響しました。
その結果、東南アジアや欧米豪を中心に前年同月を下回る市場も多く、8月に続いて全体では前年割れとなっています。
ただし、1〜9月累計では30,730,200人となり、前年に続いて9月までに3,000万人を突破しました。
2026年9月は、インバウンド需要そのものは高い水準にある一方で、市場ごとの外部環境の影響がより強く表れた月と言えそうです。

|中国市場の減少に加え、中東情勢・台風・航空便の影響が各市場に
9月の訪日外客数は3,103,700人(前年同月比▲5.0%)となりました。
前年同月の3,267,228人から約16万人減少しています。
引き続き大きな下押し要因となっているのが、中国市場です。
中国からの訪日客数は430,800人(前年同月比▲44.5%)となりました。
昨年11月以降、中国政府から日本への渡航を避けるよう複数回の注意喚起が出されており、中秋節や国慶節の連休による需要はあったものの、航空便の減便などの影響もあり、前年同月を大きく下回っています。
一方、9月は中国市場だけでなく、中東情勢による航空券価格上昇がタイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツなど幅広い市場でマイナス要因として挙げられています。
さらに台風による航空便の欠航や、各国の祝日・スクールホリデーの時期ずれなども重なりました。
そのため9月は、これまで以上に「訪日人気そのもの」だけでは説明できない、航空・国際情勢などの外部要因が数字に表れた月となっています。
|各エリアの詳細
■東アジア:韓国・台湾は2桁増、中国は大幅減が継続
東アジアでは、今回も市場ごとに大きく明暗が分かれました。
- 韓国:842,300人(+25.6%) ★9月として過去最高
- 中国:430,800人(▲44.5%)
- 台湾:595,600人(+13.0%) ★9月として過去最高
- 香港:145,000人(▲3.0%)
韓国は、台風による航空便欠航の影響があったものの、継続する訪日旅行人気に加え、秋夕(チュソク)連休や航空座席数の増加が追い風となり、9月として過去最高を記録しました。
台湾も、台風の影響はあったものの、4連休や航空座席数の増加などを背景に前年同月比13.0%増となり、9月として過去最高となっています。
一方、中国は前年同月比44.5%減と、引き続き大幅な減少です。
香港も、クルーズ船寄港の減少や台風による航空便欠航などの影響を受け、前年をわずかに下回りました。
東アジアを見ると、中国の回復が遅れる一方で、韓国・台湾は引き続き非常に高い水準を維持しています。
短期的な来店・購買、SNS施策などでは、韓国・台湾は引き続き優先度の高い市場と言えそうです。
■東南アジア・インド:多くの市場が前年割れ。インド・シンガポールは好調
東南アジアでは、9月はやや弱い動きが目立ちました。
- タイ:44,800人(▲12.6%)
- シンガポール:43,000人(+6.2%) ★9月として過去最高
- マレーシア:35,300人(▲19.5%)
- インドネシア:44,000人(▲0.2%)
- フィリピン:42,800人(▲17.1%)
- ベトナム:45,800人(▲9.2%)
- インド:27,600人(+8.7%) ★9月として過去最高
タイでは、台風や現地で発生した洪水、航空便の減便、中東情勢による航空券価格上昇、訪中旅行人気など複数の要因が重なりました。
マレーシアでも、スクールホリデーや祝日の時期ずれに加えて、中東情勢による航空券価格上昇などが影響しています。
フィリピンでは大型クルーズ船の寄港がなかったことや航空便数の減少、ベトナムでは訪中旅行人気なども前年割れの要因となりました。
一方、シンガポールはスクールホリデーや復便などを背景に、9月として過去最高を記録しています。
インドも、デリー〜成田線、ムンバイ〜羽田線などの新規就航を背景に27,600人(+8.7%)となり、9月として過去最高となりました。
東南アジアでは、市場全体の成長性だけでなく、航空路線、休暇時期、他国との旅行先競争まで含めて個別に見ていく必要があります。
■北米・豪州:米国・豪州・カナダは前年割れ、メキシコは好調
北米・豪州市場では、9月は前年割れとなる市場が目立ちました。
- 豪州:90,700人(▲6.1%)
- 米国:217,500人(▲3.2%)
- カナダ:49,300人(▲11.4%)
- メキシコ:22,300人(+13.0%) ★9月として過去最高
豪州、米国、カナダでは、いずれも訪日旅行人気そのものは継続しているものの、中東情勢による航空券価格の上昇や台風による航空便欠航がマイナス要因となりました。
カナダでは、一部州における祝日の時期ずれも影響しています。
一方、メキシコは継続する訪日旅行人気に加え、9月中旬の祝日期間による需要増もあり、前年同月比13.0%増。9月として過去最高を記録しました。
米国や豪州は9月単月では前年割れとなったものの、1〜9月累計では米国が+5.2%、豪州が+2.2%となっており、中長期的な訪日需要は依然として堅調です。
■欧州:多くの市場で前年割れ。中東情勢による航空券価格上昇が影響
欧州では、9月は前年を下回る市場が多くなりました。
- 英国:45,200人(▲4.1%)
- フランス:35,700人(▲8.0%)
- ドイツ:46,100人(▲12.7%)
- イタリア:26,100人(▲9.7%)
- スペイン:23,800人(▲3.6%)
- ロシア:23,700人(+11.9%) ★9月として過去最高
- 北欧地域:16,600人(▲4.5%)
欧州の多くの市場では、継続する訪日旅行人気はあるものの、中東情勢による航空券価格の上昇が訪日旅行のハードルとなっています。
英国では、これに加えてヒースロー空港の航空管制システム障害やクルーズ船寄港減少なども影響しました。
一方、ロシアは制裁などによる影響が続く中でも、訪日旅行人気やクルーズ船寄港などを背景に23,700人(+11.9%)となり、9月として過去最高を記録しています。
欧州市場については、航空運賃やフライト環境の影響を受けやすい一方、地方周遊や文化・自然・食など高付加価値体験との相性が良い点は変わりません。
単月の訪日客数だけでなく、消費単価や滞在期間も含めて評価したい市場です。
■中東地域:+27.0%で9月として過去最高
中東地域は37,700人(前年同月比+27.0%)となり、9月として過去最高を記録しました。
中東情勢が他市場の航空券価格に影響している一方で、中東地域から日本への訪日客数そのものは好調に推移しています。
9月中旬のイスラエルにおけるユダヤ教の祝日や、航空便の増便などが訪日需要を押し上げました。
2026年前半には航空便の運休・減便による影響も見られましたが、直近では訪日需要が回復し、1〜9月累計でも217,000人(+18.0%)となっています。
市場規模はまだ大きくありませんが、高付加価値旅行やファミリー旅行との相性も良く、引き続き注目したい市場です。
|1〜9月累計は3,073万人。中国以外の市場では順調に伸長。
2026年1〜9月の訪日外客数は、30,730,200人(前年同期比▲2.9%)となりました。
前年同期の31,651,327人を約92万人下回っていますが、前年に続き9月までに3,000万人を突破しています。
ここでも、全体の前年割れに大きく影響しているのが中国市場です。
中国は1〜9月累計で3,335,500人(▲55.5%)。前年同期の7,487,508人から約415万人減少しています。
一方で、
- 韓国:8,262,700人(+21.6%)
- 台湾:5,997,600人(+19.1%)
- 香港:1,963,300人(+7.7%)
- 米国:2,522,800人(+5.2%)
- インド:277,700人(+19.0%)
- メキシコ:173,500人(+25.8%)
- ロシア:155,600人(+20.5%)
- 中東地域:217,000人(+18.0%)
など、多くの市場では前年を上回っています。
JNTO公表値から単純計算すると、訪日客全体では前年同期から約92万人減少していますが、中国を除く市場では、前年同期より約323万人増加している計算になります。
2026年の訪日インバウンドは「前年より弱い」というよりも、中国市場の大幅な減少がありつつも、その他の市場が継続成長している状態と見る方が実態に近いと言えます。

|今月のポイント:中国減少に加え、“航空コスト”が市場動向を左右する要因に
2026年9月の訪日外客数は3,103,700人(前年同月比▲5.0%)となりました。
中国市場の大幅な減少は引き続き全体の数字を押し下げていますが、9月に特徴的だったのは、中東情勢による航空券価格の上昇が幅広い市場に影響していることです。
東南アジアだけでなく、豪州、北米、欧州でもJNTOが減少要因として航空券価格上昇を挙げています。
また、台風による欠航や航空便の減便、各国の祝日・スクールホリデーの時期ずれなども重なり、9月は多くの市場で前年割れとなりました。
一方で、韓国・台湾・シンガポール・インド・メキシコ・ロシア・中東地域の7市場では9月として過去最高を記録しています。
インバウンドマーケティングでは、単に「訪日客が増えている国」を追うだけではなく、
市場規模・成長性 / 航空路線・航空運賃 / 旅行時期・祝日 / 旅行消費額・単価 / SNSトレンド / 自社の商品や地域との相性
といった複数の要素を見ながら、ターゲット市場を選ぶことが重要です。
特に2026年は、中国のように政策・国際関係で大きく数字が変化する市場もあれば、インドや中東、メキシコのように航空アクセスや訪日人気を背景に継続的に伸びている市場もあります。
「どの国から何人来ているか」だけではなく、「なぜ増えているのか、なぜ減っているのか」まで読み解くこと。
これが、これからのインバウンド施策ではより重要になってきそうです。
カルチベートでは、最新データに基づく市場分析から、課題や目的に応じたターゲット市場の選定、SNS・インフルエンサー施策、広告、リテール施策、サンプリングなど、インバウンドマーケティングの企画・実施を一貫してサポートしています。
訪日インバウンド施策をご検討中の企業・自治体の皆さまは、ぜひお気軽にカルチベートまでご相談ください。
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年9月推計値)」
