今回は、2025年7月の訪日インバウンド動向を、最新データをもとに振り返っていきます。
「7月は夏休みシーズンで観光需要が盛り上がる時期」とは言われますが、今年は一段と特別な結果になりました。
総数は343.7万人、7月として過去最高を更新
2025年7月の訪日外国人旅行者数は 343.7万人。
前年同月比で 4.4%増、これまでの最高記録だった2024年7月を14万人以上上回りました。
つまり、「史上最も多くの外国人旅行者が日本を訪れた7月」だったということです。
背景には、アジア圏からの安定的な需要に加えて、欧米や中東市場の伸びが大きく寄与しています。特にスクールホリデー(夏休み)の影響が大きく、家族旅行や学生旅行が全体の数字を押し上げました。
地域ごとのハイライト
■東アジア市場:台湾と中国が牽引
- 中国:97.4万人(+25.5%)
地方路線の新規就航やクルーズ寄港もあり、大幅増。アフターコロナ以降、戻りの遅れていた中国市場がようやく復活基調に。 - 台湾:60.4万人(+5.7%)で過去最高
航空便の増加が功を奏し、7月として記録を更新。日本旅行のリピーターも多い安定市場です。 - 韓国:67.9万人(▲10.4%)
他国需要やSNSで拡散した地震情報がマイナス要因となり減少。依存度が高いだけにリスク分散の必要性も感じられます。 - 香港:17.6万人(▲36.9%)
韓国同様に、「7月に大地震が起こる」という“ウワサ”の流布が大きく影響し、訪日観光者数が大幅減。また7月に発生した台風による航空便の欠航も減少の要因となりました。
東アジアは引き続き訪日インバウンドの中核ですが、市場ごとの差が鮮明。特に中国・台湾は地方路線や新規チャーター便が結果に直結しているため、「航空アクセスを意識したプロモーション」が有効です。
■東南アジア市場:インドネシアとベトナムが好調
- インドネシア:3.8万人(+27.2%)で過去最高
夏場は需要が落ち着く時期にも関わらず、スクールホリデー効果で大幅増。 - ベトナム:5.4万人(+7.6%)で過去最高
ダナン〜関西便の復便がプラス要因に。 - インド:1.8万人(+22.5%)
直行便増便で利便性向上、堅調に伸びています。
一方で、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシアは需要が一服。海外旅行人気の分散や、日本の夏の猛暑イメージも影響したと考えられます。
インドネシア・ベトナム・インドは「次の成長株」。中長期的に訪日需要を伸ばすために、教育旅行や若年層向けプロモーションが効果的かもしれません。
■欧米・豪州市場:夏休み旅行で大幅増
- 米国:27.7万人(+10.3%)
- フランス:4.6万人(+23.7%)
- ドイツ:2.8万人(+23.9%)
- オーストラリア:5.0万人(+3.3%)
いずれも7月として過去最高を記録。スクールホリデーによる家族旅行需要や、円安によるコストメリットが強く働いています。
さらに スペイン・イタリアも直行便再開でアクセスが改善し、数字が大きく伸びました。
欧米市場は「長期滞在・高消費」が特徴。地方誘客や体験型コンテンツと親和性が高いため、観光地側にとってもチャンスが広がっています。
■新興市場:ロシア・北欧・中東が急伸
- ロシア:1.1万人(+99.1%)
経由便やクルーズ需要で急増。 - 北欧:1.9万人(+20.3%)
ストックホルム〜羽田便の新規就航効果。 - 中東:2.0万人(+55.9%)
直行便増便+訪日人気の高まりで大幅増。
北欧や中東は「航空路線の新規開設」が需要を一気に引き上げる好例。航空会社・旅行会社と連携した共同プロモーションが効果的と考えられます。
まとめ
2025年7月の訪日インバウンドは、記録更新というポジティブな結果になりました。ただしその内訳を見ると、
- 東アジアの一部市場では減少
- 欧米・中東は過去最高を連発
- 新興市場が存在感を増している
という「多極化」の流れが見えてきます。
今後は、 航空路線の動向 × 為替トレンド × 季節要因 を的確に捉え、各市場に合わせた情報発信がカギとなりそうです。
円安効果や地方路線の新規就航はまだまだ追い風。2025年後半に向けて、訪日観光はさらなる広がりを見せるかもしれません。